昨夜遅く 仕事を終えて、すべての 電気系統を落とした。
工房は静かな暗闇につつまれ、打ち終えたばかりのダマスカスと炉が暗闇で 赤く光っていた。ん?音がする...。その場に座り込んで 耳を傾けた、
ペリペリ♪ パリパリ♪ ペリパリ♪
外気にあたり急速に冷える鉄から 酸化膜が浮き上がる音のようだ。
その音を初めて 聴いたのかどうかも 定かではないくらいに、 音と目の前の事象が一致している。
「木の葉がハラハラ落ちる」 という表現があるが それが表現に留まらず 本当にハラハラと音がするような。
何かで鉄は冷える時 音を立てると 読んだ事がある。
それを読んでから 気になっていた鉄の自身の音だが、時間に追われる日々では 消灯と同時に工房を後にしていた。
今回私が聞いた音と 本で読んだ音は別物だと思うが、 鉄に音があることが嬉しかった。
さっきまで 輝いていた鉄はぼ~っと 鈍い小豆色になっていた。
そんな小豆色に向かって、
「君の表情一つ一つは素晴らしく魅力的で私を夢中にさせるよ。 君に出会えて幸せだよ。」と心で呟いた。