鏤? Diary Forja-Artistica

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December.01 2020

折れたね。

長いことダマスカスを鍛えている。
ダマスカスは本来なら《折れにくく、強い刃物》を作るために生まれてきた素材だ。
しかし、元来チキンな私は刃物ってのが苦手だ。IMG-7255.JPG
                       ー写真 亀井正樹ー
なので専ら、ダマスカスを素材に自己表現をしてきた。私のダマスカスはオブジェを作るために私だけの手法で進化してきた訳で、ナイフ制作のそれとは別物になっていると思う。
やり方も工程も同じなのだが、注意を払うポイントがまるで異なる。似て非なるものってやつだ。
もし、ナイフを本気で鍛造、熱処理、成形までやろうとしたらそれのみにキチンと集中して人生かけなきゃいけないと思う。
そんな気持ちでいるのだが、諸事情からナイフを作らなきゃならなくて、
人生最後の刃物と決めて作ってた。
ダマスカスを鍛え、鋼を付け、荒成形し、焼き入れ焼き戻ししと順調に進み。
割れた!!!心は折れた!!!IMG-9583.jpg

嘆いていたら、岐阜の刃物鍛冶の友人が
「なにを言ってますの!!そんなのフツーフツー。よくあることよ。それでも歯を食いしばって作り続けるのよ。」ってさ。
そりゃ私には無理だ〜。刃物専門でやってる方でも上手く行かない時は本当に上手く行かないそうだ。
刃物鍛えて、昔ながらのやり方で焼き入れしてる人って完全頭狂ってるよ。(えーと言葉は悪いけどコレは最高級の賛辞です。)
私みたいにダマスカス出来るイコール刃物出来るって訳じゃない。
テキトーな逃げ道探してそれなりの物ならある程度経験ある人間なら、誰でもなんとかなる。
あるいは、資金があって、文明の利器や科学に頼ればもっと事はスムーズかもしれない。
でも私が作りたかった最後の一本はそんなんじゃない。
昔ながらのガチの一本勝負。IMG-8218.jpg
今までのダマスカス経験と、門前の小僧で吸収してきた刃物の知識を注いで作ってきたんだけどね。
以前作った時より、鋼の扱いも、温度管理も焼き入れも焼き戻しもしっくり来たのにな〜。
無念。
やはり一本を成功させるには人生かけなきゃアカンと思う。
でも、私には他に作りたい物がありすぎて、ナイフを作る愛情が欠けてる。
だから私はもうナイフは作らん。

作らんという決意は刃物鍛造している人々に対する最大のリスペクトだ。
でも最近ナイフメーカーで鍛造から全てやっている人って本当に稀です。
ナイフ用鋼材買ってきて削って、熱処理は外注って流れが主流みたい。
逆言えば、削り成形だけでも難易度高し、奥深いって事よね。

あ。鋼の入っていないペーパーナイフくらいは作るかもしれないけどね。

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